平成26年7月、男女雇用機会均等法が改正されました。今回はその中身についてご紹介したいと思います。
改正内容について
■間接差別の対象が拡大
改正前の均等法では、「総合職の労働者」を募集、採用、昇進、職種変更する際に、合理的理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることは間接差別として禁止していました。
以下の3つについて厚生労働省令では、合理的な理由がない場合は間接差別となっていました。
①労働者の募集または採用にあたって、労働者の身長、体重または体力を要件とすること
②コース別雇用管理における総合職の労働者の募集または採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
③労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること
平成26年7月の改正では、②の「総合職の労働者」という限定がなくなり「すべての労働者」に対象範囲が拡大しました。さらには「募集または採用」の部分に「昇進・職種の変更」の措置も追加されました。
つまり、すべての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更にあたって、合理的な理由がないにもかかわらず転勤要件を設けることは、間接差別に該当することになったのです。
■性別による差別事例が追加
性別を理由とする差別(直接差別)に該当するものとして、「結婚していること」を理由に「職種の変更や定年の定め」で男女異なる取扱いが追加されました。
平成18年厚労省告示の性差別指針には、以下の12項目について男女で異なる取扱いを禁止しています。
①募集および採用
②配置
③昇進
④降格
⑤教育訓練
⑥福利厚生
⑦職種の変更
⑧雇用形態の変更
⑨退職の勧奨
⑩定年
⑪解雇
⑫労働契約の更新
「結婚していること」を理由とする差別的取扱いについて、改正前に明記されていたのは①から⑥、⑧、⑪から⑫でした。
平成26年7月からは、⑦、⑨、⑩についても明記されることになりました。
■セクシュアルハラスメント対策の徹底
セクハラ指針では、異性に対するもの、または同性に対するものという明確な記載はありませんが、異性間のみならず同性間のセクハラについても対象となっていました。それが「同性に対するもの」とはっきり明記されることになりました。 同性に対するセクハラ対策を講じていない場合は早急に対応すべきです。
また、指針の中では、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関し雇用管理上」講じなければならない措置として以下のことが明記されています。
①事業主が、職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として講じなければならない措置
たとえば、
●就業規則等でセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を規定するなどし、労働者に対して周知・啓発すること
●就業規則等でセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行なった者に対する懲戒規定を定めるなどし、労働者に対して周知・啓発すること
②苦情を含む相談に応じて、適切に対応するための必要な体制整備
たとえば、
●相談窓口を設置するなどし、相談に対して適切に対応すること
③職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
たとえば、
●事実関係を迅速かつ正確に確認すること
●就業規則等で規定している場合に、規定に基づいて必要な懲戒その他の措置を講ずること
●再発防止に向けて、改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発すること
④上記①~③の措置と併せて講じなければならない措置
たとえば、
●プライバシー保護に必要な措置を講じること
●就業規則等で、『相談または事実確認に協力したことなどを理由として不利益な取り扱いを行なってはならない旨』を規定するなどし、労働者に対して周知・啓発すること
平成26年7月からは、上記の措置の周知・啓発の際には、
●性別による役割分担意識に基づく言動が原因や背景になっているおそれがあること
●その役割分担意識に基づく言動をなくしていくことがセクハラ防止のためにも重要であること
が明記されました。
参考リンク
厚生労働省 性差別指針
厚生労働省 セクハラ指針
厚生労働省 職場におけるセクシュアルハラスメント対策について
厚生労働省 コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針

性別を理由とする差別の禁止
男女雇用機会均等法では、男女双方に対する雇用管理上の差別的取扱いが禁止されています!
採用から退職に至るまでのすべての人事雇用管理が対象です。
■募集 ■採用 ■配置(業務の配分および権限の付与を含む) ■昇進 ■降格 ■教育訓練 ■福利厚生 ■職種の変更 ■雇用形態の変更 ■退職の勧奨 ■定年・解雇 ■労働契約の更新
禁止されている具体的な措置についてはこちら
平成18年厚生労働省告示第614号
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では、どのような行為が性別を理由とする差別に該当するのでしょうか?
例えば、
・採用面接の際に、女性に対して「子供が生まれたらどうするの?」と聞くこと!
男性に対してこの質問はしないですよね。
質問したとしても、女性に対して質問する時とではその意味するところが違うはずです。
男女で異なる選考を行なうことが均等法に違反するということを、充分に注意する必要があります。
このほかにも、
・男性には実施しない採用試験を女性には実施すること
・「男性5人募集、女性2人募集」などと、男女で異なる採用枠で募集すること
・「男性のみ対象」または「女性のみ対象」の就職説明会などを実施すること
※ポジティブ・アクションに該当する場合は均等法違反になりません。
(ポジティブ・アクションについては下記参照)
・男女を募集対象としているにも関わらず、どちらかの性別の応募を断ること
など、
募集・採用の際に配慮すべき事柄がたくさんあります。
『もしかしたら・・』
『判断しづらい・・』
というときは、迷わず専門家に相談しましょう。
男女雇用機会均等法(条文)
(性別を理由とする差別の禁止)
第5条
事業主は、労働者の募集及び採用について、
その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。
第6条
事業主は、次に掲げる事項について、労働者の性別を理由として、
差別的取扱いをしてはならない。
1.労働者の配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)、昇進、降格及び教育訓練
2.住宅資金の貸付けその他これに準ずる福利厚生の措置であつて厚生労働省令で定めるもの
3.労働者の職種及び雇用形態の変更
4.退職の勧奨、定年及び解雇並びに労働契約の更新

間接差別の禁止
間接差別とは
- 性別以外の事由を要件とし
- 一方の性が他方の性に相当程度の不利益を与え
- 合理的な理由がない
場合、間接差別にあたります。
以下の①~③が、間接差別として禁止!
≪改正前≫
1 労働者の募集または採用にあたって、労働者の身長、体重または体力を要件とすること
2 コース別雇用管理における総合職の労働者の募集または採用にあたって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること
3 労働者の昇進にあたり、転勤の経験があることを要件とすること
※赤字は、平成26年7月に改正された箇所です。
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では、どのような行為が間接差別となるのでしょうか?
例えば、
・荷物の運搬をおこなう作業に従事する従業員を募集する際、合理的な理由なく体力に自信がある者を要件にすること!
身長、体重、体力を要件とするには、業務の遂行に特に必要と認められる合理的理由がなければ均等法違反です。合理的理由がある場合にも、募集の際には、「体力に自信がある者」といった抽象的な言い方ではなく、「○○を持てること」といった具体的な要件が必要です。
このほかにも、
・身長、体重、体力の要件を満たしている者は「平均的評価」において採用し、要件を満たしていない者は「特に優秀という評価」において採用すること
・筋力を必要とする業務内容ではあるが、機械等の導入により実際には特に筋力を必要としないにもかかわらず筋力を要件とすること
・長期間にわたって転勤の実態がない、または転勤の実態はあるがあくまでも転勤希望者のみ対象にしているような場合に、募集・採用にあたって転勤できることを要件とすること
など、
間接差別とならないよう配慮が必要です。
また、均等法違反ではなかったとしても、裁判において間接差別と判断されるケースもあります。
雇用管理を行なう上では充分に注意しましょう。
男女雇用機会均等法(条文)
(性別以外の事由を要件とする措置)
第7条
事業主は、募集及び採用並びに前条各号に掲げる事項に関する措置であつて
労働者の性別以外の事由を要件とするもののうち、
措置の要件を満たす男性及び女性の比率その他の事情を勘案して
実質的に性別を理由とする差別となるおそれがある措置として
厚生労働省令で定めるものについては、
当該措置の対象となる業務の性質に照らして
当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、
事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合
その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない。
参考リンク
平成18年厚生労働省告示第614号

女性への特例措置
雇用管理を行なうにあたって、女性の優遇が認められる場合があります。ポジティブ・アクションに当たる場合です。
ポジティブ・アクションとは・・
ポジティブ・アクションとは、
男女の役割分担意識や過去の経緯から生じている男女労働者間の格差を是正するための取組みを言います。
例えば、
・管理職は男性の割合が圧倒的多数だから、女性を積極的に管理職に採用する
・営業職は男性ばかりだから、女性の営業職を増やす努力をする
といった、女性を優先的に採用・配置させることで男女バランスを均衡に近づけることです。
女性の活躍は、職場に活気が出たり、顧客からのニーズへの対応が男性視点だけでなく女性視点を取り入れることによって幅が広がったりと、大いにプラス効果も期待できます。
企業の成長のためには、女性の活用は今後ますます重要になってくるでしょう。
男女雇用機会均等法(条文)
(女性労働者に係る措置に関する特例)
第8条
前3条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び
待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として
女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。
参考リンク
ポジティブ・アクション情報ポータルサイト http://www.positiveaction.jp/
職場での女性の活躍を推進する「ポジティブ・アクション」のご紹介 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku04/pdf/140523-01.pdf

妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
妊娠または出産に関する以下の事由によって、女性労働者に不利益な取扱いをすることは禁止です!
①妊娠したこと
②出産したこと
③母子保健法による健康管理措置を求めたこと、または受けたこと
④労働基準法による坑内業務や危険有害業務に就けないこと、就かないことの申出をしたこと、または就かなかったこと
⑤労働基準法による産前休業の請求または産前休業したこと、産後に就業できないこと、または産後休業したこと
⑥労働基準法による軽易業務への転換を請求、または転換したこと
⑦労働基準法による時間外労働、休日労働、深夜業をしないことを請求、または時間外労働、休日労働、深夜業に就業しなかったこと
⑧労働基準法による育児時間を請求、または取得したこと
⑨妊娠または出産に起因する症状により労働できないこと、労働できなかったこと、または能率が低下したこと
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では、どのような行為が不利益取扱いとなるのでしょうか?
例えば、
・減給する、賞与等において不利益な算定を行なう。
実際に妊娠・出産等によって就業していない期間や労働能率が低下した部分に関して、算定の際に算定の対象外とすることは合理性が認められます。しかし、それを超えての不利益な算定は均等法に違反します。
妊娠・出産等による不利益だ、との認識や誤解が生じないよう、充分すぎるくらいの配慮と丁寧な説明が必要です。
このほかにも、
・妊娠したと報告してきた女性労働者に対して、退職勧奨をおこなうこと
※その退職勧奨が、妊娠を理由とするものだと判断された場合に、本来働き続けていれば得られたであろう賃金を保障しなければならないケースもあります。
・妊娠した女性労働者の契約を更新しないこと
※これまで何度も更新を繰り返してきたようなケースだと、妊娠したことを理由とする契約の未更新と判断される可能性があります。
均等法では、厚生労働大臣が必要と認めた場合は事業主に報告を求めることがあり、その報告をしない、あるいは嘘の報告をすれば、罰則も適用されます。
対応に迷った時は専門家にご相談ください。
男女雇用機会均等法(条文)
(婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)
第9条
事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、
又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、
労働基準法 (昭和22年法律第49号)第65条第1項の規定による
休業を請求し、又は同項 若しくは同条第2項 の規定による
休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて
厚生労働省令(※)で定めるものを理由として、
当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対して
なされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が
前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。

セクシュアルハラスメント対策
セクハラに関して、以下①~⑨の対策を講じなければなりません。(義務!)
■周知・啓発■
①就業規則等でセクシュアルハラスメントがあってはならない旨の方針を規定するなどし、労働者に対して周知・啓発すること
②就業規則等でセクシュアルハラスメントに係る性的な言動を行なった者に対する懲戒規定を定めるなどし、労働者に対して周知・啓発すること
■相談(苦情含む)への対応■
③相談窓口を設置すること
④相談に対して適切に対応すること
■事後対応■
⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥就業規則等で規定している場合に、規定に基づいて必要な懲戒その他の措置を講ずること
⑦再発防止に向けて、改めて職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を周知・啓発すること
■その他の措置■
⑧プライバシー保護に必要な措置を講じること
⑨就業規則等で、「相談または事実確認に協力したことなどを理由として不利益な取り扱いを行なってはならない旨」を規定するなどし、労働者に対して周知・啓発すること
参考リンク
平成18年厚生労働省告示第615号
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では、どのような行為がセクシュアルハラスメント対策を講じていないことになるのでしょうか?
例えば、
・2、3人の小さな会社だからと、セクハラに関する相談窓口を設けない!
均等法ではセクシュアルハラスメント対策は、会社の規模にかかわらず講じなければならないとされています。
相談に対応する担当者を決め、社員に周知しておく必要があることに注意しましょう。
このほかにも、
・セクハラに関する相談をしてきた従業員を、トラブルメーカー扱いして退職させること
・女性従業員が、取引先の役職者からセクハラを受けたと相談してきたが、取引先に対して注意などできないとして、なんの対応もしないこと
など、
指針で義務づけられた措置を講じないことは、均等法違反になるおそれがあります。
場合によっては専門家に相談し、充分な知識に基づいた労務管理をおこなうことが事業主に求められていると言えます。
男女雇用機会均等法(条文)
(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置)
第11条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により
当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、
又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、
当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

妊娠中・出産後の母性健康管理措置
事業主が講ずべき措置(義務)
①妊娠中または出産後の女性労働者に対して
(母子保健法に基づいた)保健指導・健康診査を受けるための時間を確保してください。
<具体的な頻度・回数は・・?>
■妊娠中■ 妊娠23週まで・・・・・・・・・・4週間に1回
妊娠24週から35週まで・・・・・2週間に1回
妊娠36週から出産まで・・・・・・1週間に1回
■産後1年以内■ 医師が必要とする時間
②妊娠中または出産後の女性労働者に対して
女性労働者が医師等からの指導を守れるように、以下の措置を講じてください。
○妊娠中の通勤緩和
例)時差通勤
勤務時間の短縮
交通手段・通勤経路の変更・・・・・など
○妊娠中の休憩に関する措置
例)休憩時間の延長
休憩回数の増加
休憩時間帯の変更・・・・・など
○妊娠中または出産後の症状等に対応する措置
例)作業の制限
勤務時間の短縮
休業・・・・・など
男女雇用機会均等法(条文)
(妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置)
第12条
事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が
母子保健法 (昭和40年法律第141号)の規定による保健指導又は健康診査を受けるために
必要な時間を確保することができるようにしなければならない。
第13条
事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を
守ることができるようにするため、勤務時間の変更、
勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
参考リンク
厚生労働省
働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/seisaku05/01.html
妊娠・出産をサポートする女性にやさしい職場づくりナビ(厚生労働省委託・母性健康管理サイト) http://www.bosei-navi.go.jp/

派遣先へも均等法が適用
以下の規定は派遣先にも適用されます。
- 妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止
- セクシュアルハラスメント対策
- 妊娠中・出産後の母性健康管理措置
労働者派遣法に基づく「派遣先が講ずべき措置に関する指針」では派遣契約を締結する際には性別を記載してはならないと定められています。
- 性別を理由とする差別の禁止
均等法の趣旨に照らして行なってはならない措置も定められています。
- 間接差別の禁止
また、ポジティブ・アクションの取組みが認められています。
- 女性への特例措置
こうして見てみると、派遣先にも均等法に則った適切な管理・運用が派遣労働者に対して求められていると言えます。
労働者派遣法(条文)
(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 の適用に関する特例)
第47条の2
労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の
当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、
当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、雇用の分野における
男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 (昭和47年法律第113号)第9条第3項、
第11条第1項、第12条及び第13条第1項の規定を適用する。
参考リンク
厚生労働省
派遣先が講ずべき措置に関する指針
