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雇用契約に付随する形で、会社は使用者としての立場から、従業員に対しての安全配慮義務が発生します。これは労働契約法の第5条に

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする

 

と明文化されていることからもわかります。そして具体的な内容については危険作業や有害物質への対策、安全衛生教育や健康診断等の内容を盛り込んだ労働安全衛生法が主に関わってきますが、メンタルヘルス対策においても使用者の安全配慮義務として課されるものにもなっています。

ところで、労働契約法には罰則の規定がありません。では、何もしなくてもよいか、と言われればそうではなく、安全配慮義務を怠った場合には、民法上の不法行為責任や、使用者責任、債務不履行等に問われ、多額の損害賠償を求められるケースもあります。

ここでは特に、労働安全衛生法の「健康診断」と、「メンタルヘルス対策」についてご紹介したいと思います。

雇用契約のイメージ

 

健康診断について


健康診断については、労働安全衛生法に記載があり、主なものとして下記が挙げられます。

①雇入れ時の健康診断
常時使用する従業員を雇い入れるときは、医師による健康診断を行わなければなりません。1年以上雇用予定の契約社員や、1週間の労働時間が、正社員の4分の3以上の者(パートタイマーの中でも比較的時間が長い方)に対しても同様に必要となります。ただし、事前に健康診断を受けて入社した者については、診断書を提出することで省略することができます。

②定期健康診断
会社は、常時使用する従業員に対し、1年以内に1回、定期に医師による健康診断を行わなければなりません。

③特定業務従事者の健康診断
体に負担をかける特定の業務については、6カ月に1回の頻度で健康診断をする必要があります。

特定の業務とは…

  • 多量の高熱物体を取り扱ったり、著しく暑熱な場所における業務
  • 多量の低温物体を取り扱ったり、著しく寒冷な場所における業務
  • ラジウムやエックス線など有害放射線にさらされる業務
  • 異常気圧下における業務
  • 重量物を取り扱う業務
  • 深夜業を含む業務

…など

一般健康診断と特殊健康診断

 ※クリックすると拡大します。

この他、海外派遣労働者や給食従事者の健康診断がありますが、上記の①~③と合わせて「一般健康診断」と呼びます。

健康診断これに対し、有機溶剤や石綿(アスベスト)、特定の化学物質を取り扱う業務等に従事する従業員に対しては6ヵ月内に1回(一部3ヵ月や1年以内に1回)行う「特殊健康診断」と呼ばれるものがあります。その他にも都道府県労働局長の指示により、臨時の健康診断を行わなければならない場合もありますので、自社に必要な健康診断はどれなのか、適正に把握しておかなければなりません。

 

ポイント

「従業員が健康診断を拒否するのだがどうすればよいか?」

会社が従業員の健康を把握したり、結果に応じて職務内容や労働時間を短縮する等の配慮をするための健康診断ですが、特に事情もないのに、従業員が受診を拒絶するのであれば問題です。この場合、どう対応すればよいのでしょうか?
労働安全衛生法にはこんな一文があります。

「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない」(法第66条5項)

前各号というのは会社が実施しなければならない健康診断についての規定ですが、それに対して従業員にも受診する義務を負わせています。罰則の規定はありませんが、会社の命令に背くようなら、就業規則に基づき懲罰の対象にすることも考えてよいのではないでしょうか?

 ポイント「健康診断の時間は労働時間?費用は?」

特殊健康診断の時間は労働時間とされていますが、一般健康診断の時間はどうなのでしょうか。
一般的な健康の確保を図ることを目的として会社にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、受診のために要した時間については会社と従業員の間で話し合い等で決めるもの。ですが、従業員の健康の確保があって初めて会社の円滑な運営が成り立つことを考えると、その受診に要した時間も賃金を会社が支払うことが望ましい、との通達が出されています。
したがって、一般健康診断についてもやはり労働時間として取り扱う方がよいと思われます。
また、健康診断を実施するのに要する費用については、法によって会社に健康診断の実施が義務づけられている以上、当然に会社が負担すべきもの、と、こちらも同じく通達が出されています。

 

メンタルヘルス対策について


仕事に対してストレスや悩みを抱えているメンタルヘルス不調者は年々増加傾向にあります。また、これに呼応するように精神障害に関する事案の労災請求件数も年々増加しています。従業員のメンタルヘルス不調は会社の円滑な業務運営に差し障りますので、なるべく早い段階で職場環境の改善等の対策をしなければなりません。

メンタルヘルス対策には、メンタルヘルス不調となることを事前に防止する「一次予防」、メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を行う「二次予防」、そして、メンタルヘルス不調となった従業員の職場復帰を支援する「三次予防」の3段階に分けられています。

①予防~ストレスチェック制度の活用~

平成27年12月より、一定規模以上の会社について「ストレスチェック制度」の導入が義務化されます。これは常時使用する従業員に対して、1年以内ごとに1回、定期的に医師または保健師等により従業員の心理的な負担を把握するものです。
「常時使用する従業員」とは雇入れ時の健康診断と同様、1年以上雇用予定の契約社員や、1週間の労働時間が、正社員の4分の3以上の者も含みます。

ストレスチェックの内容ですが、「職業性ストレス簡易調査票」を用いることが望ましいとされており、これについては厚生労働省のページに掲載してあります。また健康診断との同時実施も可能とされていますが、健康診断と違い、従業員の受診義務はありません。メンタルヘルス対策
結果は、従業員に対し、直接通知されることになります。

結果を受けた従業員から申出があった場合、医師による面接指導等を行います。会社としてはこの面接指導の段階で医師から意見等を徴収し、当該従業員に対する労働時間の短縮や職務内容の変更・部門の異動など必要に応じた就業上の措置を施すことになります。またストレスチェックの職場ごとの集団的分析は可能ですので、これらを活用して職場環境の改善を検討するとよいでしょう。

ストレスチェック制度の詳しい内容についてはこちら

②休職

うつ病等の精神障害を患い、休業することになった場合。
まずは従業員に治療へ専念してもらうことになります。その際、定期的に連絡を取り状況を確認するのは構いませんが、職場の人間関係が原因であった場合、直属の上司や原因となった人物が連絡を取ると本人にとってプレッシャーとなり、治療の妨げになる可能性もあります。専門のスタッフや人事部など別部門の上役、仲の良い同僚などから連絡を取る方がベターでしょう。医学的見地ではうつ病の場合、完治するのに最低6ヵ月ほどかかるとも言われていますので、就業規則との兼ね合いを考えながら休業期間を設定するとよいでしょう。

③復職

休業期間の満了時期が近づいたら、本人に復職の意思があるかどうか確認する作業が必要になります。本人が復職を希望する場合は担当医の診断書を提出させることなりますが、本人の復職意思が強い場合、担当医が作成する診断書も復職者の意思を反映させた内容になりがちなようです。従って、産業医や別の専門医の診断を受けるよう指示を促すことも必要になると思います。また、リハビリ出勤や、部門の異動等をすることで本人の復職支援につながる場合もありますので十分に話し合ったうえで復職をさせるとよいでしょう。


ポイント就業規則の整備・見直しを…

休業期間の設定がなかったり、復職に向けての取り決めがない場合は都度の対応になりますが、仮に本人が復職を希望しているのに自然退職扱い等をしてしまうと、トラブルにつながります。そうならないように、就業規則にあらかじめ休業の原因や期間、復職にむけての過程をしっかり盛り込んでおくことが大切です。まずは、自社の就業規則に休業に関する規定(休職期間や休職できる条件、業務上か業務外か、休職中の連絡・報告について、など)がしっかり盛り込まれているかどうか、いま一度確認しておくことをお勧めします。

就業規則に関する事項はこちら

ポイント職場復帰支援プログラムの作成

例えば人事部のメンタルヘルス担当者が異動になってしまい、対応まで変わってしまうと、従業員や休業している者も困惑してしまいます。職場復帰支援プログラムを作成し、厳格な運用を行うことで、休業から職場復帰までの流れに一貫性を持たせることができます。まだまだ浸透していない職場復帰支援プログラムですが、メンタルヘルス不調による休職者の増加に伴って今後は必要性が増してくると思いますので早めに作成・導入することをお勧めしています。


自分に厳しく、仕事に対する責任感が強い人ほどメンタルヘルス不調に陥りやすいといわれています。彼らは会社にとってとても優秀な人材ではないでしょうか?風通しのよい、快適な職場環境の維持・改善は非常に難しいことです。人の心は読めませんし、相手が先輩・上司であればなおさら本音は言いづらいでしょう。そうならないためにもやはり日頃のコミュニケーションや社内教育は意識的に行う必要があります。

社会保険労務士事務所カルテットでは、メンタルヘルス対策における従業員・経営者向けのセミナー、相談窓口代行を承っています。福岡県内はもちろんのこと、南は鹿児島県に至るまで、九州各県対応できます。

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