毎年4月から9月にかけては熱中症の発生件数が増加します。熱中症とは、高温多湿の環境下で水分・塩分バランスが崩れ、体内の調整機能が破綻するなどして発症する障害を総称した傷病です。最悪の場合は死に至る恐れもあります。
熱中症の症状と対処方法
熱中症は以下の3つの分類に分けられいます。
(福岡労働局 労働基準監督署パンフレットより引用)
意識障害やけいれん、手足の運動障害、大量の発汗、高体温の場合は非常に危険な状態とされています。「いつもと違うな」と思ったらすぐに対処しましょう。
- 涼しい環境への避難(移動)
風通しの良い日陰や、クーラーが効いている室内などに移動し、体を冷やしましょう。 - 体の冷却
防護服等厚手の服装の場合、体から熱を発散させることができませんので、薄い服装に着替えましょう。また、シャワー等で体を冷やすのも非常に効果的ですが、そのような環境にない場合は氷嚢や冷たいペットボトルなどをで大きな血管が通う首やわきの下、大腿の付け根にあてて冷やします。顔色が悪かったり(青白い)場合や意識が朦朧としている場合は座布団等で足を少し高くして横になりましょう。 - 水分・塩分の補給を…
熱中症は体内の水分や塩分が欠乏している状態です。意識がある状態で、自分で飲めるのであれば、水分補給をしましょう。できればスポーツドリンクなど塩分やミネラルを含んだ飲み物の方がよいです。 - こんな時は救急車を呼びましょう
周りの人で、意識がない、全身のけいれん、自分で水が飲めなかったり、脱力感や倦怠感が強く動けない、そんな場合はためらわずに救急車を呼びましょう。意識がない場合は、正常な呼吸をしているのかを確認し、していないのであれば直ちに心臓マッサージ(胸骨圧迫)や人口呼吸をする必要があります。近くにAEDがある場合はそれらの措置と合わせて利用します。
熱中症予防対策
■作業環境管理
WBGT値の低減等を図ります。「WBGT値」とはWet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略で「暑さ指数」とも呼ばれており、人体の熱収支に影響の大きい気温、湿度、輻射熱の3つを取り入れた指標です。WBGT計を使って測定し、基準値を超えないようにしましょう。また、冷房を備えた休憩場所の整備、冷たいおしぼりや氷など体を冷やせる物品、スポーツドリンク等水分・塩分を摂取できる飲料水などを備えましょう。
■作業管理
現在高温多湿下で作業をしている人に対しては、作業環境の状況を常に確認しながら、場合によっては連続作業時間の短縮を検討します。また、新入社員や配転等で異動してきた従業員等は、暑熱環境へ少しずつ慣れさせ作業環境に適応させていくことも大切です。その他、適度に水分や塩分を摂ったり、通気性の良い服装を着用させるよう指導しましょう。直射日光直下では帽子等の着用も効果的です。
■健康診断結果の活用、ほか
雇入れ時、定期健康診断等で、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等の異常がある場合は熱中症にかかりやすくなるとも言われています。医師等の意見を勘案し、必要に応じて作業の転換等の措置を講ずるのがよいでしょう。また日頃より作業前のチェックポイントとして、睡眠不足、前日の飲酒、体調不良等確認し従業員の健康確認を行うことも大切です。
■労働衛生教育
熱中症を発してしまった従業員に対する具体的な対処方法をマニュアル化したり、病院等の緊急連絡先を把握しておきましょう。会社全体で「熱中症は起こさせない」という意識を共有することが一番大切です。